お久しぶりです!
久々にブログを更新しようと思って、受験ネタに何を書こうか考えていたら、、、
あれ?もうネタなくね?
ってなってしまった今日この頃
僕は思いました。
「せっかく理系なんだから、今自分が研究や勉強していることをわかりやすく解説すれば良いじゃないかと!」
というわけで、始めていきましょう「現役理系大学生の物理解説シリーズ」!
第一回目の今回は"文系でもわかる量子力学"の話です!
本来なら物理学科の大学3年生が一年間かけて習うものを1つの記事にまとめたので、すごく長くなってしまいますが、ちょっとでも興味がある人はぜひ最後まで読んでみてください!
序章:量子力学の世界にようこそ
みなさん名前だけはおそらく人生の中で一度は聞いたことがあるでしょう。
今回扱うのはそんな「量子力学」のお話。
そもそも量子論というのはミクロ(1mmの1万分の1)の世界の話だ。
そんな目では見えない小さい世界では電子が無数に存在し、その電子が確率的に動いているというのが今回の量子論を深く知っていく上で一番のネックになるところ!
しかし、古典力学の父であるアインシュタインはこれに反対している。
なぜならアインシュタインは世の中の全ての現象は確定的であるという信念を持って物理学の世界を切り開いていったからだ!
したがって量子論の確率的性質を提唱したボーアとアインシュタインは真っ向から対立していくことになる。
こんな複雑怪奇な世界と物理学者の奮闘が背景にあるのが量子力学なのだ!
それでは、量子力学の歴史を順を追って説明していこう。
一章:量子の誕生
光の正体をめぐる歴史
僕たちが普段目にしている光は波なのか粒なのかという議論はずっと行われている。
僕個人としては物理学科の大学生が量子力学を理解する上では光は波と思ってしまった方が理解に苦しまないと思うが、今回はそういった主観は捨てて
まず、ただ事実をみんなに知ってもらいたい!
光の正体は今まで様々な物理学者たちが立ち向かってきたが、これに対して世間一般の人が納得できるような答えはまだ存在していない。
強いていうならば、光は波と粒両方の性質を持っているんだ。
この光を波と考える説を波動説、粒と考える性質を粒子説と言っている。
まずはそれぞれの説が発表されるに至った経緯について説明していこう!
・粒子説
ニュートンが17世紀に提唱した仮説。
光のいくつかの性質は光が粒子であるとすると説明がうまくいくことから、光の本質は粒子であるとしたもの。
粒子説を有力にした実験はヘルツが発見した光電効果の実験、プランクによるエネルギー量子仮説を用いた黒体輻射の説明など。
・波動説
ホイヘンスが17世紀に提唱した仮説。
光の回折などの現象は光が波でないと説明がつかないことから、光の本質は波であるとしたもの。
波動説を有力にした実験は光の干渉に関するヤングの実験などが有名。
光のエネルギーはとびとびの値を示す
先ほどの量子論の歴史からもわかる通り、光は波だと思われ実験が続けられたが、
エネルギーの観点から理論に不具合が生じた。
今までの物理学では不連続はあり得ないとされてきたが、今回の実験結果からは不連続でないと辻褄が合わないことにプランクが気づいた。
このように今までの物理学では説明のつかない現象を説明するために生まれたのが量子論なんだ。
光の正体は粒だったのか
アインシュタインが光電効果の実験をすることにより、光は粒であるという理論が確立した。
これは粒子説のところを見てほしい。
これによって光が波であるという理論(波動説)のときに生じた媒質問題が解決した。
さらに、このような光の粒のことを量子と呼び、
アインシュタインは量子がとびとびの値をとるという考え方が大切であるとしたんだ。
二章:原子の中の世界へ(前期量子論)
原子の構造を探る
ラザフォードの原子模型では回転する電子は電磁波を放って原子核に衝突してしまう。
この現実との矛盾を解決するために生まれたのがボーアの前期量子論!
これは量子条件や振動数条件などの仮定を立てて原子の構造を分析できるようになる。
だけど、この理論にはまだまだ欠陥がある。
しかし、量子物理学発展の基礎を築いたのには間違いない!
三章:見ようとすると見えない波
電子を波と考えよう
二章では電子は粒子であるという考えのもとボーアが前期量子論を仮説として生み出したが、
電子を粒子と考えたせいで電子が原子核の周りを一定の位置でグルグル回る理由が説明できなかったんだ。
しかし、ここで電子を波と捉えることで電子が強め合いの位置にいるときに軌道上に存在することを確定できた。
逆を言えば、エネルギーがとびとびの値をとるのは強め合いの位置にしか電子が存在しないのは他の位置では弱め合いの干渉が起きて、電子の波が打ち消されてしまったと説明できる。
この考え方はけっこう辻褄があってるから正しそうだ。
だけど、アインシュタインの光電効果の実験によると電子は粒子のはず!
じゃあ、電子の波とは何なんだろうか?
シュレディンガー方程式の誕生
理系なら一度は聞いたことがあるはず、文系の人でも聞いたことがある人はいるはず、そんな世界的に有名なシュレディンガー方程式!
これはシュレディンガーさんによって生み出された。
ここで出てくるΨとは波の振幅について言っていて、また虚数iは想像上の数字(imaginary number)ということから、
シュレディンガー方程式も想像上の波について言及していると思われがちだが、
実験結果に沿った値を出すことからこの式は確かに存在するものについて言及している式だということがわかる。
電子の波をある側面から見たときの図は普通の波を表しているが、これは縦が振幅、横が電子の広がりを表している。
だからといって電子がまんべんなく平べったい板になっているというわけではない。
ここで出てくるのが、アインシュタインが生涯かけて猛反対した確率理論だ!
波動関数の確率解釈
電子は私たちが観測していない間は波になっているが、私たちが観測した瞬間に粒子になる!
ということがわかったんだ。
だけど、ここで新しい問題が浮上する
「じゃあ、結局粒子の場所はどのようにして確定できるの?」
おそらく、一文目を読んだ瞬間にみんな思ったと思う。
ここで出てくるのが現在の量子論にもなっているコペンハーゲン解釈なんだ!
コペンハーゲン解釈とは、ボーアの弟子たちが発案した理論で、
「電子を観測できる場所は確率によって決まるというものなんだ!」
だけど、この理論にアインシュタインは猛反対を始める!!
ここで、アインシュタインはボーアの弟子たちにこう言い放ったんだ
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「<span style="color: #ff0000;"><strong>神はサイコロを振らない!!</strong></span>」 |
これは量子力学界隈ではめちゃくちゃ有名なセリフだから覚えておいてもいいかも(笑)
4章:自然の本当の姿を求めて
電子は2つの顔を持つ
これまで散々語ってきたように、電子には波としての実験結果が多く発見されている。
しかし、僕たちが観測するときには粒子になっている。
だけど、粒子として観測される理由はわからない。
だから、量子力学を考える上で電子は波として考えればOK!!
今までの実験から全ての物質には波としての性質があることがわかった。
だけど、普段僕たちが普通に見ている野球ボールなどにはこの性質は見られない、、、
何でだ???
それはドブロイ(物質)波の式から物質の大きさに対して波長が短すぎるためだということがわかると思う。
このように、物質の大きさに対して波長が短すぎると波では無いように人間の目には映るんだ。
・ド・ブロイ波(物質波)
提唱者はルイ・ド・ブロイ。
運動する物質一般に付随する波動現象のこと。
今まで分裂していた光の波動説と粒子説を統一するために導入した概念を物質粒子一般に適用したもの。
ド・ブロイ波の式は以下のように書かれている。
つまり、野球ボールの例で言うと、プランク定数hに対して質量mが大きすぎるために、波長λが短くなってボールがまるで波じゃないかのように見えたんだ!
不確定性原理
(Δx)×(Δp)>=hという式が不確定性原理と呼ばれる式だ!
この式が表すのはΔxが1箇所に確定すればΔpの値は莫大になり、
逆にΔpが確定すればΔxが莫大な範囲を表す。
というような自然の曖昧さを表す式なんだ。
これには多くの人が違和感を覚えると思う。
だけど、自然というのは元々曖昧なものだった!と思えばこの考え方も受け入れられると思う。
今まで扱ってきた古典力学というものは現在の状況を確定したら未来も確定する学問だった。
だから、その固定観念が邪魔になって最初はこの考え方が受け入れ難いと思う。
月は見たときにだけあるのか?
アインシュタインは物理学は決定論であるという信念を貫き通すため、量子力学が自然の曖昧さを定義した学問であるというのが腑に落ちなかった。
これに反対するためにアインシュタインは「隠れた変数」を探し始める。
どういう考え方かというと、
電子はスピンしていない物質が分裂したと仮定した。
この物質が分裂したときに片方の電子を観測すれば、もう片方の電子のスピンの向きが確定できてしまうというものなんだ。
高校物理で習う運動量保存の法則を利用している!
これは、つまりはるかに離れた位置にある2物質にも当てはまるということだが、
片方の粒子を見たという情報がもう片方の粒子に瞬時に伝わるのはおかしいということを唱えたものだ。
だけど、遠隔作用は本当にあったからアインシュタインの異論は認められなかった。
5章:枝分かれしていく世界
シュレディンガーの猫
量子力学と聞いて多くの人が思い浮かべるのがこのシュレディンガーの猫だと思う。
みんな名前だけ知っていて、この話が何で生まれたのかという背景は知らないだろう。
これは、シュレディンガーがコペンハーゲン解釈の曖昧さを指摘するために唱えたパラドックスなんだ!
ある箱の中に猫と原子炉と原子核崩壊を感知して毒ガスを発生させる装置を入れる。
このとき箱を開けるまでは猫の生死はわからない。
この状態はコペンハーゲン解釈的に考えると生と死が重ね合わさっている状態になってしまう。
このように、生きているけど死んでいる状態というのは有り得ない!!
じゃあ、この猫の状態は量子力学的にはどのように説明できるのかということを問う問題。
しかし、これは次に述べる多世界解釈という考え方で説明がつく。
多世界解釈
僕たちの世界は様々なパラレルワールドの重ね合わせであるという考え方が多世界解釈だ。
こんな感じの話、アニメをよく見る人は一度は聞いたことがあると思う。
つまり、世界は常に分岐が起きていて無数のifの世界があるのではないかという考え方だ。
僕たちの日常でも
「あー、あのときあっちの選択肢を選んでいればー」
とかいうときがあると思う。
この時に自分の知らないパラレルワールドでは違う選択肢を選んだ自分が存在していると言うのだ。
そんなことあるわけない!!
と思うかもしれないが、これを否定する方法もないだからこの考え方によってシュレディンガーの猫は論破されてしまったんだ。
6章:究極の理論へ向けて
様々な現象を解き明かす量子論
1.原子の構造を解析
高校化学で習うボーアの原子模型は間違っていて、正確には確率分布によって表されるということがわかった。
これによって物理学から派生して新たに化学という学問分野が生まれた。
だから化学を発見したのは量子論なんだ!
2.ボース粒子
パウリの原理に従う粒子をフェルミ粒子と言うが、これに従わない粒子をボース粒子という。
ボース粒子は複数の粒子が同じ量子数になれるので、温度を下げると最低のエネルギーで粒子の重ね合わせが起きる。
これをボーズアインシュタイン凝縮という。
この現象の一例がヘリウム原子の超流動で、粘性がゼロになるため一度動き出したら止まらない液体が出来上がるんだ!
だから、容器内のヘリウムの液体が壁をよじ登って外に漏れるという現象が起きるんだ。
3.半導体の開発
現在、携帯電話やパソコンなど生活に欠かせない物全てに使われている部品が半導体だ。
そして、この半導体実は量子論をもとにして作られているんだ。
だから、量子論は僕たちの生活を豊かにしてくれてもいるわけだ!!
4.トンネル効果
ミクロの粒子はときどき通常は超えることのできないエネルギーの壁を通り抜けることがある。
この現象をトンネル効果というんだ。
これによりアルファ崩壊の説明が可能になって原子力発電などに応用されている!!
5.反電子の発見
電子とまったく反対の性質を示す反電子が発見された。
この発見が場の量子論という考え方に大きく貢献することになった!!
7章:量子論の発展と将来
1.場の量子論
自分たちの身の回りの空間(場)に量子論を適用するのが場の量子論。
真空では粒子と反粒子が絶えず生成、消滅を繰り返していると考えている。(先ほどの反電子の発見がポイント)
このように考えれば、何もないことを許さない量子論に真空の概念を落とし込めるようになる!
2.素粒子物理学
この分野の有名人は湯川秀樹
原子核内の陽子と中性子を結びつけるのは中間子という発見を皮切りに始まった!
3.量子宇宙論
ミクロの量子論はマクロの宇宙の世界に拡張していく!
これは、宇宙がミクロの物質から始まったというビッグバン理論から来ている。
ここには、様々な理論が存在していて、
1つは、真空の持つエネルギーが初期宇宙の急膨張とビッグバンをもたらしたと考えるインフレーション理論。
もう1つは、トンネル効果を用いて宇宙が無から生まれたことを巧みに説明した、無からの宇宙創生論だ。
このように、量子論に基づいて宇宙の始まりを考える動きが盛んになってきている。
4.量子論と相対性理論の融合
まず始めに、この2つの理論は相性が悪い。
相対性理論の生みの親であるアインシュタインがもともと量子論の確率解釈を嫌っていたからこのようになるのも仕方がないかもしれない。
しかし、自然の真理を表すこの2つの理論が相容れないのはおかしな話だ!
この2つの理論が統一され大統一理論が完成したら自然界の多種多様な現象を統一的にすべて説明できるようになる!!
5.量子コンピュータ
今、物理学の世界で最もホットな分野だ!
多世界解釈を利用した並行処理によって従来のコンピュータの処理速度をはるかに上回った性能を実現できるようになる。
要するに、ある世界Aで計算Aを行い、ある世界Bで計算Bを行い、これらの計算結果を重ね合わせたものを答えとして返すのが量子コンピュータ。
複数の計算を並行して行えるのが革新的なポイントだ!
6.量子暗号
これは量子論の観測理論を利用したものだ!
量子暗号の情報を重ね合わせの状態で送り、もし誰かがその情報を盗み見たら、重ね合わせが解除されるため痕跡が残ってしまうというセキュリティ。
しかもそのときに観測された暗号が正しいのかもわからないため、究極のセキュリティシステムになっている。
最後に
20世紀の私たちは相対性理論と量子論という自然現象を解明するための2つの柱を得た。
これから訪れる21世紀では今までよりも革新的な発見が数々あるかもしれない。
量子コンピュータに始まり、様々なデバイスが量子論をもとに発明されようとしている現代。
おそらく、今まで以上に技術革新が起こり常にアンテナを張っていないと取り残される時代がやってくるだろう。
だからこそ、文理問わずこのような最先端研究には常に意識を向けて行くべきなのだ!!
このブログごそのような情報を得るための1つの媒体になれたら嬉しい。
参考文献